浮気の師匠

私には浮気の師匠がいました。
大学時代の先輩です。

とても格好良くて、優しくて、めちゃめちゃモテて、まさに女をとっかえひっかえといった感じでした。

私は高校時代に軽い浮気をしたことはありましたが、浮気は良くないことだと信じていた頃に、先輩に出会ったので、とても衝撃的でした。

私もまだ若かったので、お酒を飲みながら、
「どうして浮気をするんですか?
彼女に悪いと思わないんですか?」
と、実に青臭い質問をぶつけていました。
先輩は
「彼女とは別に浮気したい女性がいるからだろ。
そもそもどうして浮気をしたらいけないのか?
歴史をみてみれば、洋の東西を問わず男は妾を作る文化があったということは、それが普通だってこと。」
など、世間知らずの田舎の少年には、まさに目から鱗の金言が次から次に出てきました。

「理性と本能は対極にあるものと思っているかもしれないけど、所詮、直径20㎝弱の同じ脳内にあるもの。
両方自分の本音だから、気にしないで好きなことをやればいいんだよ」
などと、私に教えてくれていました。

当時の私は若者にありがちな「本当の自分探し」で迷走中だったため、ことごとく先輩の教えが、人生の指針となってしまいました。
おかげで、私の大学時代は「学校、バイト、合コン、時々彼女」という自堕落極まりない4年間でした。

当時はどうして先輩が自分に良くしてくれるのか不思議でしたが、今、振り返ると、何となく答えはわかります。
たぶん、自分と同じ匂いの人間だと分かっていたからだと思います。
周りの人間からすれば先輩の考えは、到底理解できないでしょうが、私には不思議となことに、スッと心に入ってきました。
そして、先輩の人生の中でも数少ない理解者が私だったのかもしれません。

先輩は常々、「100人斬り」が目標だと言っていましたが、残念ながら途中リタイアとなってしまいました。
私が大学2年生の時に、心筋梗塞のため亡くなりました。
お葬式に参列したのですが、たくさんの女の子が泣き崩れていました。
同時に先輩を偲んで、慰め合っていました。
薄々、お互いの関係には気付いているとは思いましたが、私にはとても美しい光景に感じました。

そんな風に感じるのも私が先輩と同類の証拠なのかもしれません。